産業用ロボットが抱える課題とは? 業界特有の問題や解決策、取り入れるメリットを解説
産業用ロボットは製造業をはじめとする多様な分野で活用が進んでいますが、その一方で業界特有の課題や問題が浮き彫りになっています。導入を検討する際は、産業用ロボットが抱える課題を理解した上で、自社のビジネスモデルに合ったものを選ぶことが重要です。
本記事では、産業用ロボットの各業界における課題や具体的な解決策、導入で感じられるメリットを解説します。
産業用ロボットの市場規模は年々上昇している
産業用ロボットの市場規模は、技術革新や自動化需要の高まりを背景に年々拡大しています。一般社団法人日本ロボット工業会が2023年5月に発表した「ロボット産業ビジョン2050」によると、2021年の産業用ロボットの生産額は9,391億円に達しました。この額は、これまでで過去最高だった2018年の9,116億円を上回っています。
さらに総務省の予測によれば、2025年には市場規模が5.3兆円、2035年には9.7兆円に達すると見込まれており、今後も大幅な市場拡大が期待されています。
産業用ロボットが抱える3つの課題

産業用ロボットは業務自動化に役立ちますが、実際には以下のような課題を抱えています。
・人との共存における難しさ
・海外市場の進出におけるハードルの高さ
・導入費用の負担の大きさ
1. 人との共存における難しさ
産業用ロボットを効果的に導入するには、人との共存を実現するための生産体制の構築が欠かせません。工場のニーズに応じて生産設備に組み込まなければ、ロボット本来の性能を生かしきれない可能性があるためです。
多くの製造現場では、人とロボットが協力して作業を行う生産体制を取っています。作業の役割分担を明確にした上で、人がロボットの動きに合わせるのではなく、ロボットが人の作業に柔軟に対応できる仕組みを構築する必要があります。
2. 海外市場の進出におけるハードルの高さ
海外進出のハードルの高さも課題の一つです。産業用ロボットの需要は世界各国で高まっているものの、現地ではロボットを柔軟に扱える人材が不足している場合があります。
また導入時には各国で異なる規制や基準への対応も必要で、業務に取り入れるまでに時間やコストがかかります。産業用ロボットを海外市場に参入させるなら、現地の市場ニーズや労働環境に合わせた製品の提供が成功の鍵となるでしょう。
3. 導入費用の負担の大きさ
産業用ロボットを導入する際は、ロボット本体の費用に加え、性能の精度を上げるためのエフェクタや安全装置などの費用も考慮しなければなりません。
ロボットを1台導入するだけでも100万~500万円ほどかかるため、特に中小企業にとっては大きな負担となるのが現状です。そのため、導入前には費用対効果を十分に見据え、自社の生産性向上やコスト削減にどの程度寄与するのかを見極める必要があります。
産業用ロボットの導入で懸念される課題は、業界ごとで異なる
産業用ロボットの課題は全業界で共通しているものが多いですが、細分化すると業界特有の課題も見えてきます。以下で詳しく見ていきましょう。
製造業界で直面する課題
製造業で市場競争を勝ち抜くには、高品質な製品を安定的に作り続ける必要があります。品質の均一化が特に重要であり、製品の欠陥や異物混入を迅速に検知する仕組みの構築が欠かせません。
しかし、産業用ロボットにそのような技術がなければ、導入しても単に均一化されるだけで十分な効果を得られない可能性があります。
農林水産業界で直面する課題
農林水産業界で直面する課題としては、自然災害による収穫量の減少や作業の停滞です。産業用ロボットで業務を自動化しても、自然災害そのものは防げません。そのため、災害発生を想定した業務自動化を進める必要があります。
また農林水産省でもスマート農業が推奨されていますが、少子高齢化が進む中で労働力不足や担い手の減少が深刻化しているのが実状です。ロボットのメンテナンスができる人材を確保しなければ、効果的な運用は難しいとされています。
建築業界で直面する課題
建築業界の課題の一つに、完全自動化が難しい点があります。
高所での作業や運搬などは産業用ロボットで代行できますが、建築現場では現場の状況に応じて作業のスピードや手順を変える場合もあります。そのため、ロボットや自動化技術だけでは対応できない場合も多く、人的な介入が必要となる場面も少なくありません。
全てを自動化するよりも所々で自動化技術を取り入れ、人と共存しながら業務を進めていかなければならないのが課題となります。
産業用ロボットの課題解決に向けて実施していること
産業用ロボットの課題解決に向けて、ロボット業界の企業を中心に以下のような取り組みを実施しています。
・AI搭載の産業用ロボットの開発
・ロボットビジョンの技術向上
・完全自動化に向けたシステム開発
AI搭載の産業用ロボットの開発
産業用ロボットは製造現場の業務自動化を実現する役割を担っていますが、さらに高度な性能を発揮するには、日々のメンテナンスや業務システムの教育が必要です。しかし、ロボット運用に詳しい人材が社内にいなければ、技術の維持管理が難しくなり、効果的な運用が難しくなる可能性があります。
こうした教育の手間を解決するために開発されているのが、AI搭載の産業用ロボットです。自ら作業手順を学習できるAIは、トレーニングの手間をかけなくても複雑な作業環境を難なくこなしてくれるでしょう。
ロボットビジョンの技術向上
ロボットビジョンの技術向上も、解決策の一つとして取り組まれています。ロボットビジョンとは、カメラやセンサーを使って周囲の環境を認識し、物体を見分けたり追いかけたりする技術です。
製造業の課題の一つに、製品の欠陥や異物混入を迅速に検知する仕組みの構築が挙げられます。ロボットビジョンの技術が向上することで、リアルタイムで製品の検査や異物の発見が迅速にできるようになり、精度の高い品質管理を実現することが可能です。
完全自動化に向けたシステム開発
完全自動化に向けたシステム開発も進められています。例えば、建築業界では手作業ならではの緻密さが求められる作業の完全自動化はまだ難しい傾向があります。
しかし、スマートファクトリー化が進むにつれて、溶接や搬送などの作業を一貫して行えるロボットも登場しました。完全自動化に向けた技術の進展は、建設業だけでなく、他の業界にも大きな影響を与えると期待されています。
産業用ロボットが直面する課題を認識しつつ、導入を検討する必要がある
産業用ロボットで業務を自動化できる一方で、人との共存が難しい点やコスト面での導入ハードルの高さ、技術不足などが課題としてピックアップされています。導入する際は、こうした課題も踏まえて自社にあったロボットを選びましょう。
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