自動車部品メーカーによる部品検査の方法は? 検査の重要性や検査の効率化と精度向上のためのポイント
自動車部品は一つの欠陥や不具合が、大事故につながる危険性もあるため、高精度な検査を行うことが求められます。具体的に自動車部品の検査は、どのような方法で行うのでしょうか。
本記事では自動車部品の検査の目的や代表的な検査方法、検査の効率化と精度向上のためのポイントをご紹介します。どのような製品でも部品検査は重要ですが、人の命に関わる危険性がある自動車部品は、特に慎重かつ正確な検査を実施しなければなりません。本記事を参考にして、効率良く精度の高い自動車部品検査を行いましょう。
自動車部品の検査の目的
まずは自動車部品の検査を実施する目的から見ていきましょう。
欠陥や不具合のある部品の出荷防止
自動車部品の検査の重要な目的は、欠陥や不具合のある部品の出荷を防止することです。
自動車は数多くの部品で構成されていますが、ごく小さな部品だとしても欠陥や不具合があれば、自動車自体の品質や安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。部品の欠陥や不具合によって自動車が正常に動作しないと、大事故が起き、人の命を奪ってしまう事態にも陥りかねません。
自動車部品の検査では、部品の見た目・機能面の欠陥や不具合の有無を確認することで、問題のある部品が出荷されてしまうのを防げます。
部品製造メーカーの信頼の維持・向上
部品製造を行っているメーカー自身の信頼を維持し、向上させることも、自動車部品の検査を行う目的の一つです。
出荷した部品に欠陥や不具合があり、自動車が製造・販売された後に発覚すると、リコールの対象になります。万が一、メーカーが製造した部品に問題があった場合、取引先からの信頼はもちろん、社会的な信用を失うことにもなりかねません。その欠陥や不具合が原因で事故が起きてしまうと、自社の信頼は失墜してしまうでしょう。
企業活動を円滑に行うには、自動車部品の徹底した検査を実施し、自社の信頼を維持し、向上させることが大切です。
コスト削減
自動車部品の検査を行う目的には、コスト削減もあります。
欠陥や不具合がある部品を出荷してしまうと、問題が発覚した時点で部品を回収し、再度製造しなければなりません。また問題のあった部品を破棄するためにもコストが発生します。万が一その部品が原因で自動車事故などが起き、エンドユーザーが損害を被ると、製造物責任法に従い、部品を製造した会社にも損害賠償責任が発生し、莫大な費用を払わなければならない恐れがあります。
出荷前に自動車部品検査を行い、欠陥や不具合のある部品の出荷を防げば、こういったコストの発生を未然に防げるため、コスト削減につながるでしょう。
自動車部品の代表的な検査方法
自動車部品の検査方法にはさまざまな方法がありますが、ここからは代表的な3つの検査方法をご紹介します。
外観検査
自動車部品の代表的な検査方法の一つは、外観検査です。
外観検査とは文字通り、部品の外観に傷や欠け、凹み、汚れなどの問題ないかを確認する検査で、一般的に人の手や目を使って部品を確認します。目視・触診での外観検査は、大掛かりな検査装置などが必要なく、コストを抑えられるのがメリットです。初期不良を発見しやすく、検査内容も部品に応じてフレキシブルに変更できます。
ただし検査担当者のスキルや経験によって、検査結果にバラつきが生まれやすいです。また熟練の担当者でも、欠陥や不具合を見落としてしまう恐れがあります。時間も手間もかかるため、最近はカメラやセンサー、AIを導入するケースも多いです。
寸法検査
自動車部品の検査では、寸法検査も行われます。
寸法検査とは、部品の寸法を測定し、設計や仕様書に沿った寸法になっているかを確認する検査です。少しの寸法違いが大問題に発展する恐れのある自動車部品の寸法検査は、レーザー測定器や三次元測定機、輪郭形状測定機といった高精度な測定ができる測定機器が使用されます。
高精度の測定機器を使った寸法検査はデジタルデータで測定結果が残せるため、分析やトレーサビリティーにも活用できるのが特徴です。ただし高精度な測定機器の導入やメンテナンスにはコストがかかるので、費用対効果を考慮し、自社に合った測定機器を導入しましょう。
性能検査
性能検査とは、実際の使用環境下で部品が正常に動作するかを確認する検査です。
自動車部品といってもさまざまな種類があるので、一概に検査方法が決まっているわけではありませんが、耐久性や耐食性、耐熱性、耐震動性などを検査します。部品が一定期間問題なく動作できるか、どこまでの負荷に耐えられるかを確かめるためにも欠かせない検査です。
自動車部品が正常に動作しないと重大な事故につながってしまう恐れがあるため、一般的に性能検査の合格基準は厳しく設定されています。検査対象からランダムに抜き取った部品を検査する「抜き取り検査」が実施されることが多いですが、部品の特性などによっては全数検査が必要になることもあります。
自動車部品の検査で効率化だけを求めるのはNG
自動車部品の検査は、膨大な数の部品を検査しなければならないため、どのように効率化するかを検討している方もいるかもしれません。
しかし前述した通り、自動車部品の欠陥や不具合は大事故に発展する可能性があり、最悪の場合は人の命を奪ってしまう恐れがあります。効率化だけを求めて、検査フローを構築してしまうと、検査の質が落ちてしまい、欠陥や不具合を見落としたまま出荷してしまう可能性が高いです。
そのため、自動車部品の検査フローを構築する際は、効率化だけでなく精度を向上させることも考慮しなければなりません。
自動車部品の検査の効率化と精度向上のためのポイント
自動車部品の検査の効率化と精度向上を同時に実現するには、いくつか抑えておきたいポイントがあります。これからご紹介する6つのポイントを抑えておきましょう。
検査環境と検査フローを整備する
自動車部品の検査の効率化と精度向上を目指すためには、検査環境と検査フローを整備しましょう。
特に目視や触診など人の手で行う自動車部品の検査は、検査環境を整えておくことが重要です。検査担当者が作業しやすいように、効率良く検査が実施できる環境を整備し、必要に応じて検査機器などを導入しましょう。
また検査フローを整備し、どの担当者が検査を行っても検査品質に大きなバラつきが出ないようにすることも大切です。
基準書の適正を確かめて検査を開始する
自動車部品の検査の効率化と精度向上を実現するには、基準書の適正を確かめた上で、検査を開始することが大切です。
自動車部品を含め、部品検査は基準書に従って実施されます。そのため、この基準書が適正なものでなければ、いくら検査自体が正確なものであっても欠陥や不具合がある部品が出荷されてしまう可能性が高いです。検査を実施する前に基準書の内容を精査し、適正な内容になっているかを確認しましょう。
基準書に不備があった場合に適切な対応が取れるよう、報告や連携がスムーズにできる体制を整えておくことも大切です。
検査装置やAIを導入する
検査装置やAIの導入も、自動車部品の検査の効率化と精度向上を実現するポイントです。
前述した通り、自動車部品の外観検査では人による目視や触診による検査が行われることもあります。しかし人の手による検査の場合、検査効率を改善するにも限界があり、効率化を目指すとミスが発生する可能性も高くなってしまうでしょう。
検査装置やAIを導入すれば、全数検査でも短時間で行え、人の手による検査では見落としてしまいやすい欠陥や不具合も検出できます。検査担当者による検査品質のバラつきも出なくなるため、検査を効率化しながら高品質の検査を実施することが可能です。
検査結果を分析して活用する
効率良く精度の高い検査を実施するには、検査結果を分析して活用しましょう。
検査結果を細かく分析すると、欠陥や不具合が起きた原因や問題のある工程など、根本原因の割り出しにつながります。欠陥や不具合が起こる根本原因を特定すれば、製造段階で欠陥や不具合のある部品が作られてしまうのを防ぐことが可能です。また欠陥や不具合が起こるパターンを予測すれば、今後の製造工程の改善に生かせ、部品の品質の安定につながります。
欠陥や不具合のある部品の製造自体を防止できれば、原材料の無駄を防止でき、コスト削減も目指せるでしょう。
担当者の意識向上をサポートする
自動車部品の検査の効率化と精度向上を目指すには、検査担当者の意識向上をサポートすることも大切です。
検査を実施して欠陥や不具合を見つけるには、検査担当者が検査を実施する目的や検査フローを正確に理解していなければなりません。担当者間で検査に対する意識に差があると、スムーズな意思疎通ができなくなり、ミスにつながってしまう恐れもあります。検査に携わる担当者全員に検査を実施する目的や検査フローを周知徹底し、意識向上をサポートしましょう。
また高い意識を持って業務に当たれるように、担当者のモチベーションを高める取り組みを行うことも大切です。労働条件や福利厚生の見直しなどを行い、担当者のモチベーションを高く維持して、高品質な検査を実現しましょう。
精度の高い自動車部品の検査を効率的に実施しよう
本記事では自動車部品の検査の目的や代表的な検査方法、検査の効率化と精度向上のためのポイントを解説しました。自動車部品の品質は、自動車の安全性に直結します。欠陥や不具合のある自動車部品を出荷してしまわないように、ご紹介したポイントを参考にして、精度の高い自動車部品検査を効率的に実施しましょう。
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