デジタルマニュアルのメリット・デメリットとは? 作り方や注意点についても解説
デジタルマニュアルとは、電子化されたマニュアルのことです。GoogleドキュメントやWord、専用ツールを用いたサービスなど使用できるツールはいくつかあり、紙マニュアルよりも管理しやすくコスト削減につながるなどメリットが多くあります。
本記事では、デジタルマニュアルのメリット・デメリットや作り方、注意点について解説します。マニュアルの電子化を検討している方はぜひお読みください。
デジタルマニュアルはネットワーク上で運用できるマニュアルのこと
デジタルマニュアルとは、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末から閲覧や編集ができる、電子化されたマニュアルのことです。
デジタルマニュアルの形式は主に以下の3種類です。
● Webマニュアル
● 画像マニュアル
● 動画マニュアル
● 文書マニュアル
● 上記を複数組み合わせたマニュアル
Webマニュアルの場合は、HTMLやPDFで作成したデータをブラウザで閲覧します。動画マニュアルは.mp4、.avi、.movなどの動画ファイルの拡張子を使用して作成したマニュアルです。文書マニュアルはWordやExcelなどのツールを使用して作成したマニュアルを指します。
また、マニュアルの中で動画の方が伝わりやすいものや画像で説明する方が伝わりやすい内容もあるため、これらを複数組み合わせているものも存在します。
デジタルマニュアルに移行する企業が増えている
コロナ禍以降リモートワークやテレワークが増えたことに伴い、紙マニュアルからデジタルマニュアルに移行する企業が増えています。
リモートワークにはさまざまなメリットがある一方で、従業員同士のコミュニケーションが取りづらく、分からないことがあっても人に聞けない、教育が難しいといったデメリットがありました。
マニュアルを電子化すると、必要なときに自分のパソコンで確認できるたり、製造業であれば見やすい手元で掲示することができるようになり情報の共有や品質の安定が確保できます。
デジタルマニュアルはリモートワークだけでなく、通常の業務においても効率化や作業の標準化、管理が容易になるなどさまざまなメリットをもたらし、近年多くの企業で普及しています。
デジタルマニュアルのメリットとデメリット
デジタルマニュアルの作成には、メリットとデメリットがあります。導入を検討しているなら、メリットとデメリットを比較した上で判断しましょう。
デジタルマニュアルのメリット
デジタルマニュアルのメリットは次の通りです。
● 業務の効率化
● 業務の標準化
● コストと手間の削減
● どこでも閲覧できる
● 管理しやすい
● セキュリティの強化
それぞれのメリットを詳しく解説します。
業務の効率化
デジタルマニュアルを活用することで、業務効率化を図れます。例えば、製造業の場合はこれまで作業者と別でチェックを行っていた担当者が不要になり業務効率化へつなげることが可能です。
業務の標準化
デジタルマニュアルを作成すると、業務の標準化にも役立ちます。特に、複数人が業務に対して共通の認識を持つ必要がある現場の場合、デジタルマニュアルを活用することで業務の属人化や作業者によるやり方の違いを防げるでしょう。また文章や画像だけで分かりにくい作業は、動画を添付することで品質の安定・向上が期待できます。
コストの削減
紙マニュアルの場合、新しく従業員が入った時や内容の更新があったときには、その都度印刷が必要となるため紙代や印刷代がかかります。一方、デジタルマニュアルは印刷の必要がないため、コスト削減につながります。また不要となったマニュアルの廃棄も、シュレッダーを使用する手間が省けてスムーズです。
どこでも閲覧できる
デジタルマニュアルは、端末さえあればどこでも閲覧可能です。製造業の場合マニュアルは機械に掲示しているケースもあるかと思いますが、生産設備の交換や清掃時に破棄してしまうケースがあったり、場所を移動した際にマニュアルがどこにいったか探す必要が生まれるケースがあります。端末で管理していれば端末の管理・移動だけですべてのマニュアルが移動可能となります。
管理しやすい
デジタルマニュアルは保管スペースが不要であるため、紙マニュアルと比べて管理が容易になります。また紙マニュアルの場合、更新があれば個々に差し替えが必要ですが、デジタルマニュアルはパソコンで更新して保存するだけで、全員が新しいマニュアルを閲覧できます。
セキュリティの強化
デジタルマニュアルはパスワードを設定したり、閲覧者を限定したりすることも可能です。閲覧履歴を見れば誰が閲覧したかも分かるため、セキュリティ強化につながります。紙マニュアルで発生する可能性がある、紛失や情報漏洩などのリスクも防げるでしょう。バックアップを取っておけば、災害やトラブルによるデータの紛失も防げます。
デジタルマニュアルのデメリット
一方、デジタルマニュアルのデメリットは次の通りです。
● 紙マニュアルから電子化する際にコストがかかる
● 端末がなければ閲覧できない
● 複数のページを同時に閲覧しにくい
● システム障害で閲覧できなくなる可能性がある
● 慣れるまでに時間がかかる
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
紙マニュアルから電子化する際にコストと時間がかかる
既存の紙マニュアルを電子化するためには、スキャンやカメラでの撮影によるデータ化が必要であるため、時間や費用がかかります。スキャナ機器がない場合は購入する必要があり、データ化を従業員に任せる場合は、普段の業務に支障が出る恐れもあるでしょう。
端末がなければ閲覧できない
デジタルマニュアルは閲覧できる端末がなければ利用できません。誰もが閲覧できるようにするために、マニュアルが必要な従業員それぞれにパソコンやタブレットなど閲覧環境を整える必要があります。
複数のページを同時に閲覧しにくい
デジタルマニュアルは、複数のページを同時に閲覧しにくいというデメリットもあります。業務に関連するページが複数あった場合や他の作業工程と見比べたい場合、紙マニュアルなら並べて見比べられますが、デジタルマニュアルではページを行き来しなくてはいけません。
パソコンであればタブの切り替えや複数のウィンドウで閲覧可能ですが、スマートフォンの場合は、複数のファイルを同時に見るのは困難です。
システム障害で閲覧できなくなる可能性がある
デジタルマニュアルはシステム障害や端末の不具合が起きた場合、閲覧できなくなる恐れがあります。オフラインで動くシステムなら問題はありませんが、特にインターネット接続が必要なクラウドベースのマニュアルでは、ネットワークのトラブルやサーバーダウンが発生した場合に、作業が滞る可能性があるでしょう。
慣れるまでに時間がかかる
デジタルマニュアルは、使い方が浸透し、社員が慣れるまでに時間がかかる可能性があります。また使用する端末によっては画面が小さく視認性が悪くなるため、読みにくさを感じたり、画面を注視するため目の疲れを感じたりする人もいます。
デジタルマニュアルが向いている職場と向かない職場
先述の通り、デジタルマニュアルは利便性に優れており、導入する企業が増えていますが、メリットだけでなくデメリットもあります。中にはデジタルマニュアルが向かない職場も存在することに注意しましょう。
せっかく導入したのに使いにくくなっては意味がありません。デジタルマニュアルの導入を検討しているなら、一度自分の職場がデジタルマニュアルの導入に向いているかどうかを確認してみましょう。
デジタルマニュアルが向いている職場
デジタルマニュアルが向いている職場は次の通りです。
● 作業品質の均一化が必要な職場
● 作業内容や手順に変更が生じやすい職場
● デジタルマニュアルを閲覧する環境が整っている職場
複数人で業務を行う場合、担当者によって作業品質にバラつきが生じることがあります。デジタルマニュアルによって作業手順を明確化し、誰でも同じ手順で作業できるようにすることで、品質の均一化を実現できるでしょう。
また更新作業も容易なため、作業内容や手順に変更が生じる職場では、マニュアルの更新にかかる手間が削減できます。
ただし閲覧するには端末が必要なので、閲覧環境が整っていることが必須条件です。
デジタルマニュアルが向いていない職場
デジタルマニュアルが向いていない職場は次の通りです。
● 端末での閲覧が難しい職場
● 臨機応変な対応が必要な職場
デジタルマニュアルは、複数のページを同時に見る必要がある職場には不向きです。またデジタル端末は持ち運びが便利なところがメリットですが、地下・ビルの高層階・海上・電波のエリア外など電波が届きにくいところでは閲覧できない可能性があります。
イレギュラーな対応が多い職場や個人の創造性を重視する仕事、職人の勘や経験が必要な職場ではマニュアル化する業務が少ないため、メリットを感じられない可能性があるでしょう。
デジタルマニュアルの作り方
デジタルマニュアルの作り方には、無料ツールを使用する方法と専用ツールを使用する方法があります。
デジタルマニュアル作成に使える無料ツール
デジタルマニュアル作成に使える無料ツールを2つ紹介します。
Googleドキュメント
Googleドキュメントは、文書マニュアルの作成に適しており、データはクラウド上のGoogleドライブに保存されます。Googleアカウントを持っていれば複数人でファイルを共有可能で、閲覧者・閲覧者(コメント可)・編集者と3つのアクセス権限を設定できます。共同編集ができ、コメント機能を活用してファイル内でコミュニケーションを取れるところもメリットです。共有範囲の指定もできるため、情報漏洩のリスクも抑えられるでしょう。
Googleのツールには他にもスライド・スプレッドシート・サイトなどがあり、デザインテンプレートの使用やグラフの作成などもできますが、デザイン性の高いマニュアルに仕上げたい場合には不向きです。
Microsoft Office365
Microsoft Word、Excel、PowerPointといったソフトウェアは、すでに導入していれば、新たに費用をかけずに利用できるというメリットがあります。また普段から使い慣れている社員も多いことから、比較的導入しやすい選択肢と言えるでしょう。Wordは文書マニュアル、Excelはデータ集計、PowerPointは写真・図・動画の挿入に適しています。
ただしMicrosoftのソフトウェアは上級者向けの高度な機能も備えているため、ソフトに関する知識の有無でマニュアルの品質に差が出る可能性があります。修正時にレイアウトが崩れたり、データが表示されなくなったりするなどの不具合が生じる恐れもあるでしょう。
また共同編集機能がないツールは、情報共有やバージョン管理に手間がかかることがあります。
デジタルマニュアル専用ツール
デジタルマニュアル作成専用ツールは、マニュアル作成に便利なテンプレート・編集機能・共同作業機能などが搭載されており、ガイドに沿って文章や画像を挿入するだけで質の高いマニュアルが作れます。作業工数の削減や属人化も防ぐためにも効果的です。
操作手順書を自動作成できるツールや現場作業の動画マニュアルに対応できるツール、業務知識や過去の事例の蓄積や活用ができるツールなどさまざまな機能があるため、マニュアルの目的に適したものを選びましょう。
デジタルマニュアルを作成する際の注意点
デジタルマニュアルを作成する時は、ただ紙マニュアルをそのまま電子化するのではなく、いくつかのポイント押さえておくことが大切です。以下で、デジタルマニュアルを作成する時の注意点を解説します。
電子化する目的を明確にする
デジタルマニュアルの作成前に、何のためにマニュアルを電子化するのか、目的を明確にすることが大切です。紙マニュアルをそのままデジタルマニュアルにしただけでは、手間やコストがかかっただけでメリットを実感できない可能性があります。目的を明確化することで、必要な書類やツールの選別、図や動画の検討などが可能となり、より分かりやすく作業効率が上がるマニュアルが作成できます。
デジタルマニュアルを利用するシートをイメージして作成する
デジタルマニュアルを作成する際には、実際にデジタルマニュアルを利用するシーンをイメージして作成することが大切です。例えば外出先で閲覧することが多いのであればスマートフォンやタブレットにも対応できる形式で、スクロールやクリックの回数が少ないマニュアルが良いでしょう。一目で内容を理解できるよう、図や表を入れるのもおすすめです。利用者が使いにくいと感じるデジタルマニュアルは、作業効率の低下を招く恐れがあるため、便利さを重視しましょう。
更新頻度の高いマニュアルから電子化する
デジタルマニュアルに移行する際は、更新頻度や重要度の高いマニュアルから順に電子化することをおすすめします。全てのマニュアルを一気に電子化すると、現場の混乱を招く恐れがあります。現場の状況や反応を確認しながら進めると、トラブルを防げるでしょう。
対応する端末が多いツールを利用する
デジタルマニュアルは、使用するツールにより表示できない端末もあります。外出先やリモートワークでも閲覧できるよう、対応している端末が多いツールを利用しましょう。
業務により紙のマニュアルも用意する
場合によっては、全てを電子化するのではなく、紙のマニュアルを用意しておくことも大切です。例えばチェックを入れながら行う業務やシステムトラブル時の対応などは、デジタルマニュアルよりも紙マニュアルの方が適しているでしょう。
業務の効率化や標準化にはデジタルマニュアルの導入がおすすめ
デジタルマニュアルは、更新や閲覧がしやすく業務の効率化や標準化をしたい企業におすすめです。紙マニュアルと比べて管理がしやすくセキュリティを高める効果も期待できます。作成する時は、紙マニュアルをそのまま電子化するのではなく、目的やメリットを生かし、利用者が便利だと感じられるものにしましょう。
デジタルマニュアルは、GoogleやMicrosoftなどが提供する文書作成ツールでも作成できますが、より効率的に質の高いマニュアルを作成したいのであれば、専用のツールの利用がおすすめです。
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