バイヤーズコンソリデーションとは? 輸入プロセスやメリット、運用のポイントなどを徹底解説
輸入業務では、小口貨物の輸送コストがかかることや管理面における負担の大きさが課題となっています。こうした問題を解決する手段として注目されているのが、バイヤーズコンソリデーション(略称:バイコン)です。バイコンとは、複数のサプライヤーからの貨物を一括して輸送する仕組みを指します。
本記事では、企業で輸入業務を担当している方に向けて、バイコンの概要やメリット、運用のポイントを解説します。
バイヤーズコンソリデーションとは?
まずは、バイコンの定義や注目されている理由、具体的な輸送プロセスを理解しましょう。

バイコンとは、複数のサプライヤーからの貨物を1カ所に集約し、1つのコンテナや貨物としてまとめて輸送する仕組みです。通常の物流では、サプライヤーごとに個別の輸送が必要となり、貨物が多いほどコストや手間が増加します。コンテナを1社の貨物だけで満たして輸出する方法もありますが、荷物が現地に届くまでに時間がかかってしまいます。
しかし、バイコンの仕組みを活用すれば、各社の貨物を一つのコンテナにまとめ、一度の輸送で効率的に届けることが可能です。これにより、輸送コストを減らせるのはもちろん、荷物を届けるまでのフローを効率化できます。
バイヤーズコンソリデーションが注目されている理由
バイコンが注目されている理由の一つに、貿易・物流プロセスの多様化があります。取引の多国間化やサプライチェーンの複雑化により、従来の輸送方法では、コスト削減や輸送時間の効率化が求められる時代に対応しきれなくなっています。
また2015年に発足したASEAN(東南アジア諸国連合)における広域経済連携の進展も、注目されるようになった背景の一つです。各国間での物流需要が加速したことによって、コスト削減と効率化を同時に実現できるバイコンがより重要視されるようになりました。これを踏まえ、2017年には国土交通省によってメコン地域や周辺国における物流インフラの整備やリードタイム削減に向けた研究が行われています(※)。
国際輸送を行う企業にとって、バイコンは市場での競争で優位に立つために不可欠な物流戦略の一つです。
※参考:国土交通省.「平成29年度 メコン地域及びその周辺国におけるサプライチェーンを支える効率的な物流システムの構築に関する調査」p7.https://www.mlit.go.jp/common/001270865.pdf ,(参照2024-12-16).
バイヤーズコンソリデーションにおけるフォワーダーとバイヤーの関係性
バイコンでは、フォワーダーとバイヤーの存在が重要となります。フォワーダーは、複数のサプライヤーからの貨物を一つのコンテナにまとめて輸送する一連のフローを管理する人です。一方、バイヤーはフォワーダーに対して貨物の情報やスケジュールを提供し、輸送を効率的にできるよう働きかけます。
バイヤーが全ての荷主からの貨物を直接管理するのは、現実的に難しい場合が多いです。一般的にフォワーダーは、バイヤーに代わって各サプライヤーとの連携や貨物の統合、輸送手配を請け負い、コスト削減や時間短縮を図ります。
バイヤーズコンソリデーションの輸入プロセス
バイコンの輸入プロセスは、主に以下の流れで進んでいきます。
1.フォワーダーによって各社の貨物が1カ所にまとめられる
2.集めた貨物をコンテナにまとめる
3.輸出通関手続きを得て、目的地の空港や港へ輸送される
4.輸送先に到着後、貨物は輸入通関手続きを行う
5.全ての荷物が、バイヤーの指定する最終目的地までまとめて配送される
上記の通り、まずはフォワーダーが主体となって各社の貨物を1カ所にまとめるステップから始まります。例として、中国から日本に輸送する場合、中国国内のサプライヤーから出荷される貨物を指定の集約倉庫に集めます。統合されたコンテナは中国の港から日本の港へ海上輸送され、到着後は通関手続きを経て買い主の元へ届けられる流れです。
バイヤーズコンソリデーションとLCL・FCLは何が違う?
バイコンと仕組みが似ている物流フローとして、LCLやFCLがあります。いずれも貨物を輸送するための手法ですが、それぞれの特徴や運用方法には違いがあります。
各輸送方法の意味合いが混同しないよう、事前に把握しておきましょう。
LCL(Less than Container Load)との違い
LCL(Less than Container Load)とは、複数の荷主がそれぞれの小口貨物をフォワーダーへ輸送手配依頼を行い、フォワーダーが1つのコンテナに混載して輸送する方法です。
これだけ聞くと「同じ輸送方法なのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。確かに複数の荷主の貨物をまとめて送る仕組みは同じですが、送り先に違いがあります。
LCLでは異なる荷主の貨物が混載され、複数の目的地にいる買い主に配送されます。一方でバイコンは、積んでいる貨物の荷主が異なりますが、送り先は1カ所のみです。例えば、荷物1がA社から、荷物2がB社から集荷されても、どちらも最終的には一つの目的地に届けられるイメージです。
FCL(Full Container Load)との違い
FCL(Full Container Load)との違いは、一つのコンテナを一つの荷主の荷物で埋めるかどうかです。FCLの場合は、1つの荷主がコンテナを専有し、その中に貨物を全て積載します。
一方、バイコンは、複数の荷主の荷物をコンテナに集約します。コンテナを専有する点ではFCLと似ていますが、貨物の出所が1カ所なのか複数なのかが大きな違いです。
FCLは大量の貨物を一つの目的地に輸送する際に適しているのに対し、バイコンは各社からの貨物を多方面に届ける際に適しています。
バイヤーズコンソリデーションを導入するメリット
バイコンを物流フローに導入するメリットは、以下の通りです。
・物流コストの削減につながる
・輸送効率が向上する
・過剰在庫の発生を抑えられる
・環境保全に貢献できる
物流コストの削減につながる
バイコンで輸送フローを回すことで、物流にかかるコストの削減が可能です。
小口貨物を各社ごとで個別に輸送する場合、通常は輸送するごとでコストが発生します。しかし、複数の荷主の荷物をまとめて一度で輸送してしまえば、輸送回数が減り、手数料を抑えられます。
また一括輸送によって通関手続きの手間も軽減されるため、管理面でもメリットをもたらすでしょう。
輸送効率が向上する
輸入のタイミング調整や各貨物のチェックにかかる手間を大幅に削減できるため、輸送効率が向上します。
個別に輸送する場合、サプライヤーごとにスケジュール調整や貨物確認が必要となり、管理が複雑になります。しかし、複数の貨物を一括輸送するバイコンなら、各社ごとでスケジュール調整をする必要がありません。輸送のタイミングも融通が利くため、市場動向の変化にも柔軟に対応できます。
また一括輸送により貨物の管理が一元化されているため、トラブル発生時や返品対応などにも迅速に対応が可能です。輸送中の荷物追跡も、一つの番号を調べるだけで完了します。
過剰在庫の発生を抑えられる
バイコンを導入することで、過剰在庫の発生を抑えられます。複数のサプライヤーから小口貨物をまとめて輸送する仕組みによって、必要な量の貨物をタイミング良く調達でき、在庫補充をタイムリーに行えるためです。
また船積地の倉庫で貨物が一時的に保管・集約できるため、輸出側の保管スペースを用意する必要がなくなります。結果として、自社で在庫を抱えるリスクも軽減され、安定的な経営の構築にもつながります。
環境保全に貢献できる
環境保全に貢献できる点もメリットの一つです。通常、荷物が多いほど輸送回数が増え、二酸化炭素(CO2)の排出量も増加します。しかし、バイコンを活用すれば一度の輸送で完了するため、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせます。
二酸化炭素は、地球温暖化の原因にもなる温室効果ガスです。地球温暖化が進むと、世界の平均気温が上がる他、寒波や猛暑、大雨などの発生頻度が増加する恐れがあります。
CO2の排出量削減は、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みです。バイコンで輸送回数を減らせば、環境保全に大きく貢献できます。
バイヤーズコンソリデーションで懸念されている課題
バイコンは、物流の流れをスムーズにできたり、コストを抑えられたりするメリットがありますが、いくつかの課題が懸念されています。具体的な課題は、以下の通りです。
・仕入先やフォワーダーとの連携性が重要となる
・物流フローが複雑になる
・トラブルの対処方法を考慮しなければならない
仕入先やフォワーダーとの連携性が重要となる
バイコンをスムーズに進めるには、仕入先やフォワーダーとの緊密な連携が不可欠です。十分に連携できていないと、スケジュールのズレや貨物の取り違えが発生し、輸送計画が大幅に遅れる可能性があります。
例えば、仕入先Aからの貨物が予定より遅れた場合、それに合わせてスケジュールを調整しなければ、他の仕入先BやCの貨物の出荷も滞る事態に陥るかもしれません。
仕入先やフォワーダーと常に連携を取り合うことで輸送計画がスムーズに進み、トラブルや契約関係のもつれを防止できます。ビジネスに対する考え方や価値観、文化が異なる国の企業との取引であれば、なおさら連携性が重要となります。
物流フローが複雑になる
バイコンで効率的な物流が実現する一方で、物流フローが複雑化するといった課題もあります。複数の仕入先からの貨物を一つのコンテナにまとめるには、スケジュール調整や貨物の集約、輸送計画の立案が必要です。
また仕入先が多いほど、個々のニーズに応えるのが難しくなります。例えば、他の仕入先の貨物が揃わなければ出荷できない状況の中で、ある仕入先が急ぎの出荷を希望した場合、遅延が発生するリスクがあります。
トラブルなくスムーズに輸送計画を進めるには、複雑化する物流フローを的確に把握し、スケジュール通りに実行できるスキルや知識が不可欠です。
バイヤーズコンソリデーションの実行から運用までの流れ
バイコンの実行から運用までの基本的な流れは、以下の3ステップです。
1.自社の輸送コストや現行の物流フローにおける課題を明確化する
2.信頼できるフォワーダーや物流パートナーを見つけ、契約を締結する
3.導入後に浮彫になった改善点を洗い出しながら、運用を最適化していく
1. 自社の輸送コストや現行の物流フローにおける課題を明確化する
まずは自社の現状を把握し、どの部分で効率化やコスト削減が必要かを分析しましょう。
バイコンによって何を最適化したいのかを考えながら設定していくのがポイントです。例えば、小口貨物の輸送回数が多い、在庫管理が非効率といった課題が挙げられます。目的と課題を明確化した上で、どの貨物を統合すべきか、出荷量はどれくらいか、どれくらいのスパンで輸入を行うのかなど、効率的でスムーズに実行できる輸送フローを計画しましょう。
2. 信頼できるフォワーダーや物流パートナーを見つけ、契約を締結する
次は、信頼できるフォワーダーや物流パートナーを見つけていきます。バイコンを効果的に実行するには、貨物集約や輸送スケジュールの調整に関する専門知識を持ったパートナーが必要です。強みやトラブル時の対応方法、口コミ、過去の実績などを確認し、自社に合ったサービスを提供しているパートナーを選びましょう。
株式会社成電社でも、国際輸送を行う企業さま向けにサポート支援を行っております。貿易の豊富な経験を持つスタッフや、英語・中国語に対応可能な専門チームが在籍しており、輸出業務から輸入業務に至るまで幅広いニーズにお応えしております。
3.導入後に浮彫になった改善点を洗い出しながら、運用を最適化していく
現状把握とパートナー選びが終わったら、運用を開始し、定期的に状況を振り返りながら改善を進めていきましょう。輸送スケジュールや貨物の集約状況、コスト削減効果などを確認し、課題や改善点を洗い出します。こうした運用プロセスの見直しを繰り返すことで、自社の物流フローが最適化されていきます。
バイヤーズコンソリデーションをスムーズに運用するためのポイント
バイコンをスムーズに運用するには、以下のポイントを意識して進める必要があります。
・予期せぬトラブルに備えてバックアッププランを用意する
・貨物の管理体制を強化する
・輸送に伴う契約内容・手続き関係の情報を事前に確認する
予期せぬトラブルに備えてバックアッププランを用意する
バイコンでは、貨物の遅延や破損、天候不良による輸送の中断などの予期せぬトラブルが発生する可能性があります。こうした事態に迅速に対応できるよう、事前にバックアッププランを用意しておきましょう。
また必要に応じて、貨物保険をかけておくのも良いでしょう。輸送途中で貨物の破損・紛失が発生した場合、保険による補償があれば損失をカバーできます。リスクが多く付きまとう国際輸送において、保険の付保は企業の安定した経営を続けるために不可欠な要素です。
貨物の管理体制を強化する
トラブル時の代替案だけでなく、貨物の管理体制も強化しましょう。貨物の管理には、在庫管理や荷物の管理、追跡なども含まれます。複数の荷主からの貨物を集約する分、貨物情報を正確に把握し、誤配送や紛失を防ぐことがより重要となります。
管理体制を強化するには、貨物追跡システムの導入も検討しましょう。ITシステムの力を借りることで、輸送中の状況をリアルタイムで確認できるようになります。物流フロー全体の効率化のためにも、管理業務は怠らないようにしましょう。
輸送に伴う契約内容・手続き関係の情報を事前に確認する
輸送に伴う契約内容や手続きに関する情報は、事前に確認しましょう。輸送業者との契約には、貨物の引き渡し条件や責任範囲、保険の適用範囲などの細かな条件が含まれています。これらを十分に理解しておかないと、トラブル発生時に適切な対応が取れなかったり、荷物が持ち込めなかったりと問題が発生する恐れがあります。
また国際輸送では、各国の法規制や通関手続きへの配慮も忘れてはいけません。中には持ち込み禁止、もしくは事前に許可が必要な商品もあります。フォワーダーや輸送業者と連携しながら、万全の準備を整えた上で輸入計画を実行しましょう。
バイヤーズコンソリデーションの今後の展望
バイコンは、物流効率を向上させる手段として注目されており、今後さらに広がりを見せることが予想されます。
物流業界に限らず世界的にグローバル化が進む中、複数の仕入先から効率的に貨物を調達するニーズが増加しています。この仕組みを採用することで、国際取引の複雑化に対応するだけでなく、輸送回数の削減によるコスト低減や環境負荷の軽減にも寄与するでしょう。
また大企業だけでなく、成長志向でスピードを重視する中小企業にも需要が高まれば、バイコンの価値がこれまで以上に高まる可能性があります。ブロックチェーンやAIなどの技術開発が今後も進めば、自然と需要も増えていくと予想されます。
バイコンは多国間貿易の標準的な物流手法として定着し、企業の競争力強化に欠かせない存在となるでしょう。
【まとめ】 バイヤーズコンソリデーションで国際輸送プロセスを最適化しよう
バイコンは、各社からの貨物を一つのコンテナに集約し輸送することで、物流コストの削減や輸送効率の向上を実現する手法です。
一方でスムーズな運用のためには、仕入先やフォワーダーとの連携、管理体制の整備、契約内容の事前確認が重要です。貿易関係で起こり得るリスクや、トラブルのリカバリー案も事前に検討しておきましょう。
株式会社成電社では、国際輸送を行う企業さまの生産活動を支えるため、世界各地からの部品調達を円滑に進められる体制を整えています。多言語に対応可能なスタッフが複雑な輸出入業務や物流管理をサポートし、効率的かつ円滑な調達プロセスを実現いたします。国際物流や部品調達に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。